
憧れのマクラーレンを手に入れたい、あるいはすでにオーナーとして至福のドライブを楽しんでいる方にとって、どうしても頭の片隅をよぎるのが手放す時の価格についての不安ですよね。インターネットで少し検索すると、価格が暴落するからやめておけといったネガティブな意見ばかりが目につき、本当にそんなに損をしてしまうのだろうかと心配になるお気持ちはとてもよくわかります。数千万円という価格のスーパーカーだからこそ、売却時の金額のブレは家計や次の車への乗り換え計画に直結する非常にシビアな問題です。この記事では、私がこれまで見てきたスーパーカー市場のリアルな動向をもとに、なぜそのような噂が広まっているのか、その根本的な背景と、愛車の価値を最大限に引き上げて賢く売却するための具体的なノウハウを、包み隠さず丁寧にお伝えしていきます。
- マクラーレンの査定価格が他社に比べて下落しやすいと言われる根本的な背景
- モデルごとの需要の違いやオプション装備が査定額に与えるリアルな影響
- フェラーリやランボルギーニといったライバル車との残価率の明確な違い
- 愛車の価値を正しく評価してくれる買取店の選び方と高く売るための秘訣
マクラーレンのリセールは本当に悪いのか
マクラーレンはF1で培った圧倒的なテクノロジーを誇る素晴らしいスーパーカーですが、中古車市場での価格評価となると、ブランドの歴史や販売戦略など少し複雑な事情が絡み合ってきます。まずは、なぜ価格が下がりやすいと言われているのか、その真相に迫っていきましょう。
マクラーレンのリセールが悪いと言われる最大の理由
スーパーカー界隈で「マクラーレンのリセールは悪い」という声が頻繁に聞かれるのには、いくつかの明確な理由が存在します。その中でも最大の要因と言えるのが、「ニューモデルの発表サイクルが非常に早い」というマクラーレン特有の販売戦略です。一般的なスーパーカーブランドが1つのモデルを7年〜10年かけてじっくりと熟成させながら販売するのに対し、マクラーレンは驚異的なスピードで次々と新しい派生モデルや後継機を市場に投入してきました。例えば、MP4-12Cから650S、そして720Sへと進化していく過程は、テクノロジーの面では素晴らしいことですが、購入したオーナーからすると「せっかく数千万円出して買ったのに、たった2〜3年で旧型になってしまった」という事態を引き起こします。
車の中古車相場というのは、需要(買いたい人)と供給(売りたい人)のバランスで成り立っています。新型が次々と出れば、既存のオーナーは新型に乗り換えるために愛車を手放すため、中古車市場に一気にタマ数(供給)が溢れます。一方で、「どうせすぐ新型が出るなら、今は買い控えておこう」と考える買い手が増えるため、需要は落ち込みます。この需給バランスの崩れが、マクラーレンのリセールが悪いと言われる最も大きな理由です。さらに、マクラーレンは電子制御の塊とも言える複雑な油圧サスペンション(プロアクティブ・シャシー・コントロール)などを採用しており、保証が切れた後の高額な修理費用を恐れて、一般の中古車店が積極的に買い取りたがらないという業界特有の背景もあります。
保証切れ後のメンテナンスリスク
マクラーレンの先進的なシステムは、故障時の部品代やアッセンブリー交換の費用が国産車の比ではありません。そのため、メーカー保証(新車保証や延長保証)が切れた個体は、中古車市場での買い手が極端に警戒し、結果として買取査定額がガクッと下がる傾向にあります。リセールの悪さは、この「維持に対する不安感」がそのまま数字に表れているとも言えます。
しかし、これは裏を返せば「中古でマクラーレンを買う人にとっては、これ以上ないほどお買い得なスーパーカーである」ということでもあります。新車時にはオプション込みで3,500万円以上したモデルが、数年後には半額近くで買えてしまうケースもあるわけですから、中古車としてのコストパフォーマンスは圧倒的です。これから新車で買う人にとっては少し耳の痛い話かもしれませんが、この市場の特性を理解しておくことが、後で「こんなはずじゃなかった」と後悔しないための最大の防衛策になるかなと思います。
モデル別に見るリセールバリューの傾向と真実
一口にマクラーレンのリセールが悪いと言っても、実はすべてのモデルが等しく暴落するわけではありません。マクラーレンのラインナップは大きく分けて「スポーツシリーズ」「スーパーシリーズ」、そして限定生産の「アルティメットシリーズ」に分かれており、それぞれで査定の評価額(残価率)には大きな差があります。自分が乗っている、あるいはこれから買おうとしているモデルがどの立ち位置にいるのかを把握しておくことは非常に重要です。
まず、570SやGTといった「スポーツシリーズ(日常使いも意識したエントリーモデル)」についてですが、これらは販売台数が比較的多く、市場に流通しているタマ数も豊富であるため、残念ながら値下がり幅は大きくなる傾向にあります。購入から3年〜5年で、新車価格の40%〜50%程度まで落ち込んでしまうことも珍しくありません。一方、720Sやその後継である750Sなどの「スーパーシリーズ(主力の中核モデル)」は、マクラーレンの真髄を味わえる本命モデルとして底堅い人気があり、スポーツシリーズに比べると値落ちのカーブは緩やかです。特に、720Sの登場時はそのあまりの性能の高さに市場が熱狂し、一時期は中古車相場が非常に高い水準をキープしていました。
| シリーズ・モデル例 | リセールの傾向(残価率の目安) | 市場の評価ポイント |
|---|---|---|
| スポーツシリーズ(570S等) | やや厳しい(3年で40〜50%台) | 流通量が多く、価格競争になりやすい |
| スーパーシリーズ(720S等) | 標準的(3年で50〜60%台) | ブランドの顔として一定の需要が常にある |
| LTモデル(600LT、765LT等) | 非常に良い(プレミアがつくことも) | 期間限定・台数限定の希少価値が高い |
そして、最も注目すべき例外が「LT(ロングテール)」の名を冠したモデルや、セナなどの限定車です。600LTや765LTといったサーキット走行に特化したハードコアモデルは、生産期間や台数が厳しく絞られているため、マクラーレン愛好家からの需要が常に供給を上回っています。これらの限定モデルに限って言えば、「リセールが悪い」という定説は全く当てはまらず、新車価格に近い金額、あるいはそれ以上のプレミア価格で取引されることもあります。もしあなたがリセールバリューを最優先でマクラーレンを選ぶのであれば、少し無理をしてでもLTモデルの枠を狙うか、すでに価格が底値付近まで落ちきっているスポーツシリーズの良質な中古車を狙うのが、金銭的なダメージを最小限に抑える賢い買い方だと言えるでしょう。
オプションの有無が査定価格に与える影響
マクラーレンをオーダーする際、誰もが心躍らせるのが「MSO(マクラーレン・スペシャル・オペレーションズ)」をはじめとする豊富なオプション選びですよね。カーボンファイバーのエアロパーツや、軽量な鍛造ホイール、そして鮮やかなスペシャルペイントなど、好みに合わせてカスタマイズしていく時間は至福のひとときです。しかし、売却時の査定というシビアな現実を直視した場合、これらの高額なオプション代は、残念ながら「支払った金額そのままが査定額に上乗せされるわけではない」という厳しい事実を受け止める必要があります。
例えば、外装の至る所をカーボンパーツに変更し、内装もフルアルカンターラ仕様にして、オプション総額が500万円に達したとします。しかし、買取査定においてこの500万円がまるまる評価されるかというと、せいぜい100万円〜150万円程度のプラス査定にしかならないのが一般的です。なぜなら、あなたがどれだけこだわったボディカラーや内装色であっても、それはあくまで「あなた個人の好み」であり、中古車市場の次の購入者が全く同じ好みを抱いているとは限らないからです。奇抜なカラーリングや極端なカスタマイズは、逆に「買い手が限定される(売れ残るリスクがある)」と判断され、マイナス査定の原因にすらなることがあります。
リセールを高く保つための「必須オプション」
- フロント・ビークル・リフト(段差を越えるための車高上げ機能。日本市場では絶対必須)
- スポーツエキゾースト(マフラー音を良くするオプション。スーパーカーには欠かせない)
- カーボンセラミックブレーキ(多くのモデルで標準化されつつありますが、付いていないと減額)
- 人気のある無難なボディカラー(マクラーレン・オレンジなどのイメージカラーか、白・黒)
とはいえ、全くオプションがついていない「素(す)」の状態の車が高く売れるかというと、それも違います。マクラーレンを買う層は、ある程度の特別感を求めているため、最低限の「見栄えの良さ」と「実用性」を備えている必要があります。特に「フロントリフト」は、日本の段差が多い道路事情を考えると、付いていないと買取を敬遠されるレベルの最重要オプションです。リセールを意識するのであれば、誰もが欲しがる定番の機能的オプションはしっかりと押さえつつ、個性が強すぎる高額な内外装オプションは控えめにする、というバランス感覚が非常に大切になってきます。自分が楽しむためのカスタマイズと、手放す時の資産価値の維持。この2つの間でどう折り合いをつけるかが、スーパーカーオーナーの腕の見せ所ですね。
認定中古車と一般中古車の価格差のカラクリ
マクラーレンのリセールを語る上で、絶対に避けて通れないのが「どこで車を買うか、そしてどこに売るか」という流通ルートの違いです。中古車市場を見渡すと、正規ディーラーが販売する「認定中古車(マクラーレン・クオリファイド)」と、街のスーパーカー専門店や一般の中古車店が販売する車両とで、同じ年式・同じ走行距離であっても数百万円単位の価格差が生じていることに気づくはずです。この価格差の裏には、スーパーカー特有の「安心感」と「保証」という、目に見えない強烈な価値が隠されています。
マクラーレンの正規ディーラーで認定中古車として販売される車両は、メーカーが定めた非常に厳しい点検基準(マルチポイント・インスペクション)をクリアしており、消耗品の交換や最新のソフトウェア・アップデートが完璧に施された状態で店頭に並びます。そして何より、最低1年間の手厚いメーカー保証が付帯します。先ほどもお話しした通り、マクラーレンは複雑な油圧システムや電子制御の塊であるため、万が一故障した際の修理費用は目玉が飛び出るほど高額になります。そのため、次に中古でマクラーレンを買う人の心理としては、「少し高くてもいいから、絶対に保証がついている安心な車を買いたい」と考えるのがごく自然な流れなんですね。この需要の高さが、認定中古車の販売価格を高く保ち、結果として正規ディーラーでの下取り価格をある程度底上げする要因になっています。
| 販売ルート | 販売価格の傾向 | 買取・下取り時の評価ポイント |
|---|---|---|
| 正規ディーラー(認定中古車) | かなり高め(保証・整備代が上乗せ) | 自社で販売した優良顧客の車は比較的高く下取る |
| スーパーカー専門の買取・販売店 | 標準的〜やや高め | 独自の販売ルートがあり、オプションをしっかり評価 |
| 一般の買取店・中古車店 | 安めになることが多い | 故障リスクを恐れ、安全マージンを大きく取って安く買い叩く |
一方で、一般の中古車店は、買い取ったマクラーレンに自社で手厚い保証をつけることが困難です。専用の診断機(テスター)を持っていないお店も多く、買い取った後に隠れた不具合が見つかった場合、お店側が丸抱えで大赤字になってしまうリスクがあります。そのため、一般の買取店は「万が一壊れていた場合の修理代(リスクヘッジ)」をあらかじめ査定額から大きく差し引いて、かなり安い金額(安全マージンを取った金額)を提示せざるを得ないのです。これが、「マクラーレンは一般店に持っていくと買い叩かれる=リセールが悪い」というイメージを増幅させている大きなカラクリです。もしあなたがマクラーレンを手放す時は、その車を「自社で直接、次のオーナーへ自信を持って売ることができるお店(ディーラーや専門店)」に査定を依頼することが、不当に安く買い叩かれないための絶対条件になります。流通の仕組みを知るだけで、手元に残るお金が数百万円変わる世界ですから、本当に奥が深いですよね。
フェラーリやランボルギーニとのリセール比較
マクラーレンの購入を検討する際、必ずと言っていいほど比較対象に上がるのが、イタリアの至宝であるフェラーリやランボルギーニです。そして、スーパーカー仲間の間でリセールの話をすると、「やっぱりフェラーリのV8モデルを買っておくのが一番損をしない」「ランボルギーニのウラカンは価格が落ちない」といった会話が飛び交います。実際のところ、これらのライバルブランドと比べて、マクラーレンのリセールは本当に「悪い」のでしょうか。フラットな視点で数字を比較してみましょう。
結論から言うと、一般的なカタログモデル(限定車ではない通常生産モデル)で比較した場合、フェラーリ > ランボルギーニ > マクラーレン という順でリセールバリューが高い(価格が落ちにくい)というのが、現在の中古車市場の偽らざる現実です。フェラーリはブランドの歴史と圧倒的なカリスマ性があり、さらに「生産台数を意図的に絞る」という徹底したブランド戦略をとっています。新車を買うためのハードル(順番待ちや過去の購入履歴)が非常に高いため、「新車が買えないなら中古でもいいから欲しい」という需要が常に供給を上回り、中古車価格が高止まりする(あるいは新車価格を超える)という特殊な現象が起きます。ランボルギーニも同様に、アウディ傘下に入ってからの信頼性の向上と、分かりやすい派手なデザインがウケて、非常に高い残価率をキープしています。
マクラーレンの強みは「買いやすさ」と「走行性能」
リセールという「お金」の面だけで見れば、フェラーリには敵わないかもしれません。しかし、マクラーレンの最大の魅力は、一見さんでもカタログモデルを普通に新車でオーダーできる「開かれたブランド姿勢」と、F1譲りのカーボンモノコックがもたらす「純粋なドライビングの楽しさ」にあります。投資対象としてではなく、純粋に「走るための最高の機材」として車を評価する層にとっては、この上ない選択肢なのです。
これに対し、マクラーレンは前述の通りモデルサイクルが早く、またブランドの歴史(市販車メーカーとしての歴史)がフェラーリなどに比べるとまだ浅いため、ブランド力というプレミアム(付加価値)が中古車価格に上乗せされにくい傾向にあります。3年後の残価率で比べると、フェラーリが70%〜80%以上をキープするモデルが多い中、マクラーレンは50%〜60%前後で推移することが多いです。この20%近い残価率の差が、金額にすると数百万円の差になるため、「マクラーレンはリセールが悪い」と際立って見えてしまうわけですね。しかし、これはあくまで「フェラーリという異常な市場」と比較した時の話であり、一般的な高級セダンやSUVと比べれば、マクラーレンの残価率も決して悪い数字ではありません。「車は乗って楽しむものであり、リセールの差額は最高のドライビング体験への入場料だ」と割り切れるかどうかが、マクラーレンオーナーになれるかどうかの分水嶺かなと思います。
マクラーレンのリセールを高める賢い売却術
ここまで、マクラーレンのリセールが厳しいと言われる理由や市場の背景について解説してきました。では、すでにマクラーレンを所有しているオーナーが、いざ手放す時に少しでも高く、損をせずに売却するにはどうすれば良いのでしょうか。ここからは、愛車の価値を最大限に引き上げるための具体的な「賢い売却術」をお伝えしていきます。
メンテナンス記録(整備記録簿)の重要性
マクラーレンを高く売るための最も強力な武器、それはカーボンパーツでもスポーツエキゾーストでもありません。これまでどのように車が扱われてきたかを証明する「整備記録簿(メンテナンスノート)」の存在です。スーパーカーの買取査定において、この記録簿の有無と内容は、査定額を天国と地獄に分けるほどの破壊力を持っています。
マクラーレンは非常にデリケートな精密機械です。エンジンオイルの交換ひとつをとっても、ドライサンプ方式の特殊な手順が必要であり、その辺のガソリンスタンドや量販店で手軽にできるものではありません。次の中古車を買う人、そして買い取る業者が一番恐れているのは、「前オーナーがメンテナンス費用をケチって、適切な整備を受けていない(=近いうちに高額な故障が起きる爆弾を抱えている)個体」を引いてしまうことです。もし整備記録簿が紛失していたり、正規ディーラーや名の知れたスーパーカー専門店以外でのよくわからない整備履歴しか残っていなかったりすると、査定士は「この車はリスクが高すぎる」と判断し、容赦なく数十万円から百万円単位の減額を突きつけてきます。
高く売るためのメンテナンスの鉄則
- 毎年の法定点検(12ヶ月点検・車検)は、必ずマクラーレン正規ディーラーで受ける
- オイル交換などの軽作業でも、明細書と記録簿にしっかりとディーラーのスタンプをもらう
- 過去の修理歴や部品交換の履歴(明細)は、専用のファイルにすべて綺麗に保管しておく
- メーターパネルに警告灯(エラーメッセージ)が出たままの状態で査定に出さない
逆に言えば、「毎年欠かさず正規ディーラーで点検を受け、必要な消耗品はすべて純正品で交換してきました」という完璧な履歴が証明できれば、それは買取店にとって「安心して高く買い取れる優良物件」になります。査定の現場では、車の外装の綺麗さ以上に、この書類の束が放つ「オーナーの愛情と管理の証」が重く評価されるのです。あなたが今まで愛車に注いできたメンテナンス費用は、売却時のプラス査定という形できっちりと回収できます。手放すその日まで、書類関係はグローブボックスの中で大切に保管しておいてくださいね。
走行距離と保管環境がもたらす査定への影響
スーパーカーの査定において、整備記録と同じくらいシビアに見られるのが「走行距離」と「保管環境」です。一般的な車であれば、1年で1万キロ走るのが平均的な目安と言われていますが、マクラーレンのような非日常を楽しむスーパーカーの世界では、この常識は全く通用しません。
マクラーレンの中古車市場では、「年間走行距離が3,000キロ〜5,000キロ未満」であることが、高額査定を引き出すための一つの大きなボーダーラインになっています。もし購入から3年で3万キロも走ってしまった場合、「過走行(走りすぎ)」というレッテルを貼られ、リセールは致命的なダメージを受けます。なぜなら、スーパーカーの買い手は「できるだけ新車に近い、乗られていないパリッとした状態の車」を好むからです。週末の早朝に少しだけワインディングを流す、あるいは月に一度のツーリングに出かけるといった、大切に「乗らずに飾っておく」ような使われ方が、皮肉なことに資産価値を最も高く保つ秘訣になってしまうんですね。
保管環境:青空駐車は論外、屋内ガレージが必須
マクラーレンの美しい塗装や、内装のアルカンターラ、レザー、そしてカーボンパーツは、紫外線や雨風に非常に弱いです。青空駐車で数年放置された個体は、塗装がくすみ、内装が日焼けで退色し、一目で「大切に扱われていない」ことがバレてしまいます。査定士はドアを開けた瞬間の「匂い」や「ヤレ感」を敏感に察知します。完全な屋内ガレージ(できれば空調付き)でボディカバーをかけて保管されていた車とそうでない車とでは、外装の評価点で大きな差がつき、査定額にダイレクトに響いてきます。
もしあなたが普段の足としてマクラーレンをガンガン乗り回しているのであれば、リセールの悪化はある程度覚悟して、「走る楽しさを存分に味わったから良しとしよう」と割り切る心の準備が必要です。逆に、ガレージの肥やしになっていてほとんど乗っていないのであれば、バッテリー上がりやゴム類の劣化(タイヤのフラットスポットなど)にだけ注意してコンディションを維持しておけば、売却時には思わぬ高値がつく可能性が十分にあります。走行距離のメーターは嘘をつきません。愛車との付き合い方が、そのまま最後のお金に直結するというシビアな現実を、しっかりと受け止めておきましょう。
乗り換えのベストなタイミングと車検の関係
車を売却する上で、「いつ手放すか」というタイミングの見極めは、リセールバリューを最大化するための非常に重要な戦略です。特にマクラーレンのような高級輸入車の場合、車検のタイミングと新車保証の期限が、買取価格の大きなターニングポイント(分水嶺)になります。
マクラーレンの新車には、通常3年間の走行距離無制限のメーカー保証が付帯しています。この保証期間内であれば、エンジンやミッションなどの主要機関にトラブルが起きても無償で修理してもらえるため、中古車市場でも非常に安心して取引されます。しかし、購入から3年が経過し、最初の車検を迎えると同時にこの新車保証が切れてしまうと、買取相場は一段階ガクッと下がります。さらに、5年目の2回目の車検のタイミングで、延長保証(マクラーレン・エクステンデッド・ワランティ)の枠組みからも外れてしまうような年式になると、故障リスクの懸念から査定額はさらに厳しくなります。つまり、最も高く、かつスムーズに売却できる「美味しいタイミング」は、新車購入から3年未満(初回の車検を受ける前)、あるいは延長保証がたっぷりと残っている状態の時だと言えます。
また、マクラーレンは数年おきにマイナーチェンジや後継の新型モデルを発表します。ディーラーから「来年、新しいモデルが発表されますよ」というアナウンスがあった時点で、既存モデルの中古車相場は少しずつ下落を始めます。正式に新型が発表され、メディアに情報が溢れ、実際にデリバリーが開始される頃には、旧型の相場は完全に一段下がってしまいます。もし乗り換えを検討しているのであれば、「車検が切れるギリギリ」や「新型が発表されてから」動き出すのでは遅すぎます。車検の半年〜1年前、あるいは新型の噂が出始めたタイミングで、早めに買取店に査定を依頼し、相場の波の「高値」で売り抜ける身軽さと決断力が、スーパーカーのリセール戦略においては非常に重要になってくるかなと思います。
専門店と一般買取店での査定額の大きな違い
マクラーレンを手放す決心がついた時、一番やってはいけない失敗が「近所にある適当な大手買取チェーン店にポンと持ち込んで、最初の提示額でハンコを押してしまうこと」です。先ほど「認定中古車と一般中古車のカラクリ」のセクションでも触れましたが、マクラーレンの価値を正しく評価できるのは、その車を整備し、自社で販売するルートを持っている「プロフェッショナルな専門店」だけだからです。
一般的な買取店は、買い取った車を業者間オークションに流して利益を得るのが基本ビジネスです。しかし、マクラーレンのような特殊な車はオークションでの相場が読みにくく、また前述の通り故障リスクを極端に恐れるため、査定システム上、どうしても「絶対に損をしない、かなり低めの安全マージンを取った金額」しか提示できません。一方で、スーパーカーを専門に扱う買取店や、フェラーリ・マクラーレンの販売を得意とするプロショップは違います。彼らは自社で直接次の顧客(スーパーカー好きの富裕層)に販売する力を持っており、MSOの特殊なオプションの価値や、LTモデルの希少性を熟知しています。そのため、一般店では評価されないカーボンパーツやスポーツエキゾーストもしっかりとプラス査定に組み込み、一般店よりも数百万円高い「適正な相場価格」を提示してくれるのです。
では、どうやって愛車の本当の価値を評価してくれる業者を見つければ良いのでしょうか。一番確実なのは、最初から1社に絞らず、複数の専門業者に査定を依頼して競合させることです。しかし、自分で何社も電話をかけたり持ち込んだりするのは非常に手間ですよね。そんな時に活用すべきなのが、複数の優良業者があなたの愛車を取り合う仕組みを持った、一括査定やオークション形式の売却サービスです。これらを活用して、愛車の現在の「リアルな最高値」を把握してから交渉のテーブルにつくのが、絶対に買い叩かれないための鉄則です。
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マクラーレンのリセールの悪さを覆すまとめ
いかがだったでしょうか。今回は「マクラーレンのリセールは悪い」という巷の噂に対して、その根本的な理由であるブランドの販売戦略から、モデル別のリアルな価格傾向、そして実際に手放す際に少しでも高く売るための「賢い売却術」まで、スーパーカー市場の裏側を徹底的に解説してきました。確かにフェラーリなどの一部の異常な市場と比較すれば、マクラーレンのリセールは数字上厳しく見えるかもしれません。しかし、それは「乗るための最高のスーパーカー」が、適正な価格で中古車市場に流通しているという健全な証拠でもあります。
最後に、この記事で解説した、愛車の価値を守り抜くための重要なポイントをもう一度おさらいしておきましょう。
マクラーレンを高く売るための重要ポイント
- リセールが悪い最大の理由は「新型の発表サイクルの早さ」と「保証切れ後の維持費の不安」にある
- スポーツシリーズは下落幅が大きいが、LTモデルなどの限定車はプレミアがつくこともある
- 高額なオプションは全額評価されないが、「フロントリフト」は絶対に欠かせない必須装備
- 「正規ディーラーでの完璧な整備記録簿」と「低走行・屋内保管」が査定額を天国と地獄に分ける
- 車検前、あるいは新車保証が切れる前のタイミングで、早めに売却のアクションを起こす
- 一般店には持ち込まず、必ずスーパーカーの価値がわかる専門店同士を競合させて最高値を引き出す
マクラーレンのステアリングを握り、カーボンモノコックの圧倒的な剛性感と、背後で咆哮するV8ツインターボエンジンの痺れるような加速感を味わう体験は、お金には代えがたい一生の財産です。リセールの悪さを過度に恐れて、ガレージにしまい込んだままにしたり、憧れの車を買うのを諦めてしまったりするのは、本当にもったいないことだと私は思います。正しい知識を持ち、日々のメンテナンスを怠らず、そして売却のタイミングと相手を間違えなければ、マクラーレンは決して「大損するだけの車」ではありません。愛車の本当の価値を知り、一番高く評価してくれる次なるオーナー(または買取店)への橋渡しを成功させることが、スーパーカーライフの美しいフィナーレになります。後悔のない売却を実現し、また次の素晴らしい車との出会いに繋げていけるよう、まずはご自身の愛車の今の実力を、プロの目でしっかりとチェックしてもらうところから始めてみてくださいね!
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